子供が吐いた…どうして?これって大丈夫?
お子様が吐いてしまったとき、親御様は大変なご心配をなさるかと思います。
慌てなくてもいい嘔吐もありますが、受診・治療が必要な病気に伴う嘔吐もあります。
冷静にお子様の様子を観察・対処し、必要であれば医療機関を受診しましょう。もちろん、念のためにと、軽症でも受診していただけます。
赤ちゃんが嘔吐した場合
赤ちゃんの場合は、胃の入口の筋肉が十分に発達しておらず、病気の有無に関係なく簡単に吐いてしまいます。少量の嘔吐ののち、何事もなかったかのように元気にしている場合は、通常は心配いりません。
ただし、発熱や下痢などの他の症状がある場合、嘔吐を繰り返す場合、機嫌が悪い状態が続いている場合には、受診が必要です。
幼児が嘔吐した場合
1歳を過ぎると、それまでほど簡単に吐くことはなくなります。ただやはり大人よりは嘔吐が起こりやすく、せき込んだ拍子に吐いてしまう、といったことがあります。
赤ちゃんの場合とほぼ同じように、他の症状を併発している場合、嘔吐を繰り返す場合には、受診するようにしてください。
子供が嘔吐する(嘔吐を繰り返す)原因・病気
子どもが嘔吐をする原因には、以下のようなものがあります。
ウイルス性腸炎
ノロウイルス
ノロウイルスは感染力が強く、大人にも感染します。
自宅などで吐いてしまいその処理を行う場合には、使い捨てマスク、使い捨て手袋などを着用し、感染を防ぐことが大切です。
嘔吐に加え、下痢や発熱などの症状が見られます。
アデノウイルス
嘔吐に加え、下痢、発熱、結膜炎などの症状が見られます。
肺炎や脳炎を合併し、重症化することもあるため、注意が必要です。
ロタウイルス
5歳までにほとんどの子どもが感染します。
嘔吐に加え、下痢、発熱などの症状が見られます。予防接種により、重症化を防ぎましょう。
腸重積
2歳未満の子どもに好発します。腸管の一部が、後方の腸管に引き込まれて重なってしまった状態です。
強烈な腹痛(泣きます)が認められ、少しするとぐったりし(不機嫌になります)、また腹痛に襲われるということが続きます。加えて、嘔吐、血便などの症状が見られることもあります。
直ちに、救急外来の受診が必要です。治療が遅れると、手術が必要になることもあります。
髄膜炎
ウイルスや細菌などの病原体が神経系に入り込む病気です。ウイルスを原因とする場合には自然治癒が期待できます。細菌を原因とする場合には発熱、嘔吐、けいれんなどの症状が見られます。
治療が遅れると、重大な後遺症が残ることがあります。
原因となる病原体には、インフルエンザ菌、肺炎球菌などが挙げられます。いずれも、予防接種によって感染を防ぐことが可能です。
食物アレルギー
卵(卵黄・卵白)、牛乳、小麦、大豆、果物、魚介類などの特定の食物によって起こるアレルギーです。じんましん、湿疹、痒みなどの皮膚症状に加え、吐き気や嘔吐、下痢、呼吸困難、血便など、さまざまな症状が見られます。
幽門狭窄症
生後すぐの赤ちゃんに好発します。
幽門(胃から十二指腸へと続く部分)が肥厚し、内容物が通過しにくくなり、噴水のような嘔吐を繰り返します。
子供が嘔吐したときの対処法
お子様が嘔吐したときに適切な対応をとることで、診断や治療に役立ったり、感染の拡大を防ぐことができます。
観察のポイント
腹痛(泣く)とぐったり(不機嫌)を繰り返す場合には、腸管が重なる「腸重積」が疑われます。嘔吐や血便を併発している場合には、疑いはより強くなります。腸重積であった場合、すぐに治療を行う必要があるため、病院の救急外来を受診するなどしてください。
その他、その後受診した際の診断・治療に役立てるため、以下のようなポイントを観察してください。
- 嘔吐の続いた時間、回数
- 腹痛、頭痛、下痢、発熱など他の症状の有無
- 機嫌の良し悪し
- 食欲の有無
吐いている時や直後にすること
身体を起こした状態で抱き、背中をさすってあげてください。ただし、寝かしつけるときのように身体を揺らすことは避けてください。吐き気が増すことがあります。
吐物が付着したお子様ご本人・親御様の衣類は、すぐに着替えてください。また、お子様のお口のまわりが汚れたままだと、吐き気を催します。拭く・洗うなどして、きれいにしてあげてください。
嘔吐後の食事・飲み物の注意点
嘔吐・吐き気が治まり、ある程度元気を取り戻したら、まずは水分を少量ずつ(スプーン1杯から徐々に増やします)、小まめに摂ることから開始します。湯冷まし、経口補水液、麦茶などを飲ませてください。
水分がある程度摂れるようになったら、食事を再開します。おかゆ、野菜スープ、短く刻んだ煮込みうどんなど、消化吸収の良いものを与えてください。
牛乳、乳製品、炭酸飲料、柑橘系のジュース、脂っこいもの、スナック菓子、食物繊維を多く含むもの、刺激物は避けます。
家族の感染予防
感染症を原因とする場合、子どもから家族へと感染が拡大してしまうことが少なくありません。以下のような方法で、感染予防に努めましょう。
- 調理前、食事前、排便後は必ず丁寧に手洗いをしてください。
- 自宅内でもマスクを着用しましょう。
- 子どもの吐物や便を処理する際は、使い捨てマスク、使い捨て手袋を着用し、使用したものを廃棄してから丁寧に手を洗いましょう。
- ドアノブ、手すりなどの共用部分は、次亜塩素酸ナトリウムで定期的に除菌します。
受診の目安
下記のような場合は、ほとんど心配いりません。
- 嘔吐が5回未満で止まった
- その後は普段通り元気な状態
- 水分が摂れる
- 食欲がある
- 他に症状がない
ただし、以下に該当する場合には、お早めに当院にご相談ください。
- 嘔吐が5回以上繰り返される
- 発熱や下痢などの他の症状がある
- 機嫌が悪い状態が続いている(赤ちゃんの場合)
また、中でも以下のようなケースでは、救急外来の受診が必要です。
- 嘔吐と下痢を何度も繰り返す
- 吐物に血液、胆汁が混じる
- 頭を強く打ったあとの嘔吐
- けいれん、意識朦朧といった症状がある
- 半日以上排尿がない
- 唇や舌が乾燥している